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航空管制の世界

航空管制

フライトシミュレーターでジェット旅客機の飛行を楽しむ際に、ある程度航空管制について理解していると、ATCを利用して管制に従って飛行することができ、よりリアルな楽しみ方ができます。
月刊エアライン2017年5月号と2019年10月号に航空管制について分かりやすく記載されていたので、いくつかの記事を引用して整理してみました。さらに詳しい情報が知りたい方は月刊エアライン2017年5月号と2019年10月号をお読みください。

航空管制の役割分担

管制業務の種類

  • 飛行場管制:管制塔から空港近辺を飛行する航空機、滑走路に離着陸する航空機、地上を走行している航空機に対しての管制業務
  • 進入管制:空港周辺の空域(進入管制区)を飛行する航空機に対し、進入・出発の順序、経路、方式の指定および上昇・下降等を指示する業務
  • ターミナル・レーダー管制:レーダーを用いて行なう進入管制業務
  • 着陸誘導管制:着陸する航空機に対し、レーダーを用いて飛行コースと適切な高度を指示し、地上から滑走路への誘導を行なう業務(戦闘機など)
  • 航空路管制:空港周辺の空域を除く、高い上空を飛行する航空機に対して飛行経路、 高度の指示を行なう業務

空港の半径9km圏内を受け持つ飛行場管制

具体的には、パイロットはまず飛びたいルートや高度をフライトプランとして管制機関に提出する。これは、いわば仮予約である。出発予定時間も申告するが、整備の都合などで出発が遅れることもある。そこで実際に乗客が搭乗して出発準備が整ったならば、管制塔のクリアランスデリバリー席の航空管制官に「エンジンスタート5分前」を通告する。これを受けたクリアランスデリバリー席は、そのルートの交通状況を見ながら飛行ルートや高度を承認する。これが本予約に相当する。空の一角が、その航空機のために確保されたのである。「次いでパイロットはグランド席にプッシュバックと、さらに滑走路までの移動を要請して許可を得る。そして滑走路手前まで来たところでローカル席(タワー)と交信し、離陸許可を得る。もちろん到着機がいる場合には滑走路手前で待つことになるし、出発機が続いている場合には空中での安全な間隔を維持できるように離陸のタイミングが計られる。

ターミナル・レーダー管制、 航空路管制へと引き継ぎ

飛行場管制が行なわれるのは半径9kmの管制圏であり、離陸した航空機はすぐにそこを飛び出してしまう。そこでローカル管制官は離陸を見届けるとターミナル・レーダー制のデパーチャー席に管制を引き継ぐ。ディパーチャー席は管制塔ではなくレーダー管制室におり、レーダーモニターで航空機の動きを監視しながら航空路まで誘導する。通常はIFR機のために定められたSIDという出発経路に沿って上昇するが、これは多くの航空機を安全に導くために設けられたものなので、余裕があるときには近道が許可されることもある。

空港から100kmほど離れると、次は航空路管制に引き継がれる。日本では札幌、東京(所沢)、福岡、那覇という45の航空交通管制所で航空路管制が行なわれており、それぞれに担当の空域が分けられている。また同じ管制部の空域も、さらに小さな空域(セクター)に分けられており、そこを通過するたびに担当の航空管制官も変わる。そして目的地空港が近づいてきたならば、航空管制官の指示で高度を下げ、目的空港のターミナルレーダー管制(アプローチ席)に引き継がれる。ここでもし同じ空港に着陸しようとする航空機が複数あった場合には、アプローチ席が両者の間隔が適正に保たれるように誘導し、最終進入コースで空港のローカル席に引き継ぐ。そしてローカル席の許可を得て着陸したならば、滑走路を出てグランド席に引き継がれ、スポットまでタキシングする許可を得る。

航空路の種類

約2万9000ftより高度は RNAV航空路

航空路の進歩は、航法装置の進歩と密に関連している。戦後の日本ではまずNDBが、続いてVORが整備されるようになった。VORの方が精度が高いが、地上局や機上の受信機が高価だったため一気には導入はできない。そこで航空路の更新もVOR受信機の普及をみながら進められた。

航空路用NDB局は1970年代に最大31局を数えたあと、VOR局の整備と共に減少して現在は廃止。航空路用VOR局は1990年代に最大52局を数えたが、現在はGPSなどを使うRNAV航法の普及とともに数を減らしつつある。

VORは便利な装置だが、地上局を結ぶようにしか航空路を設定できないので経路がギザギザになって飛行距離が長くなる。また2つの地上局を結ぶ航空路は1本しか設定できないので、交通量の増大に対応しにくい。それに対してRNAV航空路は、地上局の位置に関わらず自由に設定が可能で、しかも精度が高いので航空機の密度を高めることができる。

ただし現状ではまだRNAVに対応していない航空機もあるため、FL290(高度約2万9000ft)を境に、上空をRNAV航空路、低空を従来通りのVOR航空路としている。

無線標識同士を結ぶ かつての主流ルート VORルート(VHF Omnidirectional Range Route)

現在、日本で使われている主な航空路には、利用する航法の手段によってVORルートとRNAVルートとがある。

航空路は目には見えないため、そこを正しく飛ぶためには航法装置が必要になる。そのうち、VORを使って飛ぶのがVORルートだ。VORは、地上局から発信する電波を受信することで、航空機がどの方向にいるかを示す。

たとえば、あるVOR局から090度の方向(反対向きは270度)に伸びる航空路が設定されていたとする。この航空路を飛ぶためには、機上の受信機をそのVOR局の周波数に合わせ、飛行したい航空路の方位(この場合は090度あるいは270度)にセットしてやればよい。すると計器に、自分がそこからどちらにずれているかが表示されるため、そのずれがないように飛べばよい。それがVOR航法の基本だ。

VORは便利なので、一時は航法装置の主流となった。しかし、地上のVOR局を結ぶようにしか航空路を設定できないため、設定できる航空路の数が限られるし、そうした航空路が集中するVOR局の上空は「交差点」のように航空機が集中してしまうことになる。また、遠く洋上のようにVOR局の電波が届かないところでは利用できない。

航空会社の主流となった自由かつ効率的なルートRNAVルート(広域航法、Area Navigation Route)

道路を走る車と違い、空を飛ぶ飛行機は自機の位置や目標からの距離を何らかの方法で知る必要がある。今までは地上のVOR局やNDB局、さらにDME局などを利用してナビゲーションが行なわれていたが、GPSの発達や、それに対応する航空機搭載型GPS航法装置の発達により、「RNAV(Area Navigation=広域航法/アールナブと読む)」という、自機の位置と次の地点へのコースなどを算出・表示する航法が可能となった。

主にGPSなどのGNSS(衛星測位システム)を利用することで、地上局に依存することなく、世界中のいかなる場所でも高い精度での測位が可能だ。

地上局に依存することがないから、航空路は自由に設定することができるし、精度が高いから航空路の幅を狭くすることができる。つまり、限られた空間により多くの航空路を設定できる(より多くの航空機を飛ばすことができる)。

ただしRNAV航空路なら何でも高精度というわけではなく、実際には航法精度によってさまざまな規格がある。航法精度の規程がない場合には航空路の横間隔は20nm(約37km)となるが、航法精度±5nmのRNAV5では10~15nm(約18~28km)となり、さらに航法精度±2nmのRNAV2では8~10nm(約15~19km)となる。

いずれにせよGNSSだけ頼るのは危険なので、RNAVで飛行する航空機は他の方法でも常に位置を確認したり、測位精度を検証するようになっている。よく使われているのは地上局からの位置を示すDME(距離測定装置)で、複数のDME局からの距離がわかれば自分の位置を正確に知ることができる。そのための計算は手動では煩雑だが、航空機に搭載されたコンピューターを使えば瞬時に、連続的に正確な位置を測定することができる。また日本の上空はすべて航空路監視レーダーでカバーされており、航空管制官がそれぞれの航空機の間隔やコースの逸脱がないように見守っている。

FL290以上のRNAV対応機用ルート スカイハイウェイ

RNAVならば、航空機の間隔をより小さくすることができるが、そのための装備がない古い航空機(RNAV非対応機)がいる場合には、従来通りの間隔が適用される。つまり、こうしたRNAV非対応機が混在しているようでは、空域をうまく活用できないことになる。

そこで現在の日本の上空では、FL290(高度約2万9000ft)より上をRNAVルート、下をVORルートとして,RNAV対応機とRNAV非対応機の空域を分けている。ジェット機は空気の薄い(空気抵抗が小さい)高い高度ほど効率がよくなるが、そうした高高度を「スカイハイウェイ」としてRNAV対応機専用にしたのである。

1,000フィートの高度差ごとの ルート管理 RVSM(短縮垂直間隔、Reduced Vertical Separation Minimum)

精度の高いRNAVによって航空機の水平間隔(前後左右間隔)を狭め、限られた空域により多くの航空機が飛べるようになった。さらに垂直間隔(高度差)も狭めて、もっと多くの航空機を飛ばせるようにするのがRVSM(短縮垂直間隔)だ。

これは高度計や高度を維持するための装置(オートパイロット)などの性能向上によって可能になったもので、日本ではFL290からFL410の高度帯において、垂直間隔が従来の2,000フィートが1,000フィートに短縮されている。

日本と北米を結ぶ洋上の基本5ルート NOPACルート(北太平洋ルート、North Pacific Route)

洋上のようにレーダーの電波が届かないところにも、航空路は設定されている。代表的なのは、日本(アジア)と北アメリカを結ぶNOPAC(北太平洋)ルートだ。これは固定された航空路で、日本とアメリカ西海岸を最短距離で結ぶ大圏ルートを基本に5本が設定されている。

旅客機が、その航空路上のどこを飛んでいるかを航空管制官が知るためには、かつてはパイロットが無線で行なうポジションレポート(位置報告)に頼っていた。しかし、現在は多くの旅客機がADS(自動位置情報伝送・監視装置)を装備しており、航法装置から得られた位置情報を人工衛星経由で自動的に地上に送信するようになっている。

さまざまな運航条件に対応する 最適ルート PACOTS(太平洋編成経路システム、Pacific Organized Track System)、UPR(利用者設定経路、User Preferred Route)、DARP(動的飛行経路変更方式、Dynamic Airborne Reroute Procedure)

航空機は風の影響を受けやすいため、必ずしも最短ルート(大圏ルート)が最適ルートとは限らない。そこで、管制機関が気象状態や空域の運用状況などを考慮して、毎日新しく設定している(つまり毎日変わる)航空路がPACOTS(太平洋編成経路システム)だ。航空会社は、前項のNOPACあるいはPACOTSのどちらかを選ぶことができる。

さらに航空会社が自社の航空機の性能や離陸重量などを加味して自分で航空路を設定することがあり、これをUPR(利用者設定経路)という。
NOPACやPACOTS、UPRのいずれにしても、出発前にルートを決め、それを航空管制官に承認されて飛ぶ。離陸したあとは、基本的には承認された通りのルートを飛ぶが、現在ではDARP(動的飛行経路変更方式)といって、飛行中にさらに効率のよいルートへの変更を要求するという運用も開始されている。

従来でも、例えば予定コース上に雷雲などがある場合には許可を受けて避けるということはあったが、そのあとは元のコースに戻るというのが基本だ。いわば、工事中の場所を一時迂回して元の道に戻るようなものだ。それに対して、DARPは航空会社のディスパッチャー(運航管理者)が航空機の出発後も最新の気象状況などをチェックし、より効率のよいルートがあればパイロットに伝えて改めて管制機関からの承認を受ける。つまり迂回ではなく、別の経路に切り替えてしまうというのが違いである。

標準計器出発方式(SID)、標準計器到着方式(STAR)、着陸方式(ILS/RNAV/VOR)

SID(標準計器出発方式)

空港からの決められた出発経路である。

旅客機は基本的に計器飛行方式(IFR)で飛ぶが、これは「管制官に見守られながら管制官の指示に従って飛ぶことで、周囲の航空機と安全な間隔を保って飛ぶ方法」という意味だ。

とはいえ管制官も各自バラバラに飛ぶ航空機は監視しきれないため、一定の経路を設定して、その中で機体同士の間隔を保つ。空港からの出発時の道として定められているのがSID(標準計器出発方式)だ。デパーチャーチャートには経由すべきウェイポイント名や座標、それらを結ぶ経路の方位、高度条件等が記されている。在来型ではVOR/DMEなどの航法用地上局を基準に設定されていたが、近年はRNAVの普及でウェイポイントや経路を地上局に縛られずに設定できるようになっている。

STAR(標準計器到着方式)

空港到着時の余裕を持たせた経路である。

空港からの出発時経路がSIDであるのに対し、到着時の経路として設定されているのがSTAR(標準計器到着方式)である。これを記したアライバルチャートにもウェイポイント名や座標、方位、高度などが記されるが、交通量の多い空港ではSIDと比べて遠回りに設定されていることがある。これは到着機の集中時でも処理できる余裕を持たせるためだ。経路が空いている際には管制官のレーダー誘導によるショートカットも可能になる。

当然ながら出発機の経路とは干渉し合わないことが前提なので、その意味でも出ていくだけのシンプルなSIDと、緩やかな経路設定がなされるSTARの関係は合理的なのである。

着陸方式(ILS/RNAV/VOR)

最終進入段階におけるアプローチ情報である。

IFRで飛ぶ到着機には、STARのアライバルチャートに続き、最終計器進入段階を示すアプローチチャートも必要になる。

ILSでのアプローチでは、計器進入に入る地点、最終進入中の方位などが記されるほか、ゴーアラウンド時の待機経路までの手順や高度制限などの情報が必要となる。またILSでも着陸ランウェイごとに周波数が異なる。

さらに羽田空港にはVORとセットになったDMEのほかに、ILSごとに滑走路までの距離を示すT-DMEが装備されており、計器進入時に参考にするのはこのT-DMEの数値で、チャートにも明記されている。

NavAids on Cockpit Display

航空機のディスプレイには地上に無線施設として設置されているVOR/DMEや空港のILSなどのほか、GPS座標に設定されたRNAVのフィックスなども表示される。計器の中でどのように描かれているのだろうか。

羽田空港 ILS ZRWY34Lアプローチ中

ILSの電波に正しく誘導されている状態を示すボーイング777のプライマリー・フライト・ディスプレイ(PFD)。グライドスロープ(縦)とローカライザー(限)からのズレを示すデビエーション&スケールがあり、ここにマゼンタ色のダイヤが現在のポジションを示す。滑走路がグリーンで台形上に表示されている。IHAは羽田空港A滑走路BUY34LのILSのIDを示し、ILSのT-DMEから2.4マイルの距離にあることを示している。

高知空港 VOR RWY32アプローチ中

高知空港VORRWY32アプローチを実施。ボーイング737NGのナビゲーションディスプレイ(ND)の下端の表示からVOR1(左)・VOR2(右)ともKRE(高知VOR)にチューンされていることがわかる。VORの3レターの下にはVORまでの距離が表示されていて、KREまで3.2DME離れた位置を飛行中である。グリーンの破線はVORからのラジアルで、737の場合EFISパネルで指定。磁方位161度のアウトバウンドなどを表している。フィックスは手裏剣のような星印で描かれている。

BLOG一覧

参考文献

  • 阿施光南「航空管制の役割分担」『月刊エアライン』、2017年5月号、p.36
  • 阿施光南「航空路の種類」『月刊エアライン』、2017年5月号、p.37
  • 飛田翔「廃止がすすむ IVORという空の灯台」『月刊エアライン』、2017年5月号、p.42
  • かしわひろゆき「標準計器出発方式(SID)、標準計器到着 方式(STAR)、着陸方式(ILS/RNAV/VOR)」『月刊エアライン』、2017年5月号、p.48
  • かしわひろゆき「NavAids on Cockpit Display」『月刊エアライン』、2017年5月号、p.51
  • 阿施光南「航空路の種類と構造」『月刊エアライン』、2019年10月号、pp.24-25