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旅客機図鑑(1)

旅客機図鑑(1)

フライトシミュレーターでジェット旅客機の飛行を楽しむ際に、ある程度外観や操縦インタフェースなどを知っていることで、楽しさが倍以上上がると思います。
月刊エアライン2017年3月号に旅客機図鑑が掲載されていたので、いくつかの記事を引用して整理してみました。さらに詳しい情報が知りたい方は月刊エアライン2017年3月号をお読みください。

旅客機の顔つきとコクピット・ウインドウ

B787-9

ガラスとアクリル樹脂を積層してつくられる窓

DC-8-32

空港のスポットに駐機する旅客機の顔つきを見ると、機種によってずいぶんその表情が異なることに気付く。同じ胴体を流用している機体の顔つきは当然ながら同じであるが、コクピット・ウインドウの切り方によって表情が異なる。「昔の機体では曲面ガラスが技術的に製作できなかったことから、平面ガラスを組み合わせていた。初期のボーイング707やダグラスDC-8を見ると、小さな平面ガラスを組み合わせて曲面を模擬していたことに気付く。本格的な曲面ガラスが登場したのはボーイング747の時で、操縦席が2階に設置されたことからコクピット・ウインドシールドは左右及び上下に強く絞り込まれた形状になった。その後はロッキードL-1011が大きな曲面ガラスを採用したが、ライバル関係にあったダグラスDC-10は平面ガラスを使用しており、対照的だった。

実はコクピットのウインドシールドは表面こそガラスであるが、内部は何層にも分かれており、電導性のあるアクリル樹脂を重ねて構成されている。アクリル樹脂の部分は電熱で加熱することにより、防水と防曇の効果を発揮している。曲面ガラスがなかなか普及しなかったのはこのガラスとアクリル樹脂の接着面が剥がれやすかったことと、電導部分でアーキング(防水用の電源がショートして火花が飛ぶこと)が発生し易かったことが挙げられる。747では曲面ガラスのメーカーがトリプレックス社とセラシン社の2社存在したが、どちらも剥離件数がライバル社より1件でも少なくなるよう懸命な努力を重ねていた。しかしながら初期には剥離が頻発し、そのたびにウインドシールド交換をしなければならず、747では高所作業になることから航空会社の負担は大きかった。

曲面ガラスを多用した最新鋭機たちの顔つき

コクピットからの視界については、SAEインターナショナル(旧米国自動車技術会)の規格があり、どんな機体でもこの規格を満足するように設計しなければならない。最近の機体は大面積のウインドシールドを設置する傾向にあり、直射日光を受けた場合の眩しさや室温上昇は無視できない程に大きい。もちろんバイザーや遮光フィルムなどが装備されているが、長時間に渡り直射日光に晒されると疲労の蓄積も違ってくる。

A350-900

操縦室からの視界で問題になるのは進入着陸時の下方視界で、通常機体はピッチアップの姿勢で進入するので下方の視界がかなり制限されることになる。超音速機コンコルドはデルタ翼を採用していた関係で進入時のピッチ角が10~11度とかなり大きかった。これが777になるとピッチ角は3度なので約3倍もあり、下方視界が極端に悪くなる。これを改善するために、コンコルドでは着陸時に機首が12.5度下方に折れる設計になっていた。・ウインドシールドの枚数はフロント2枚、サイド4枚の合計6枚が標準であるが、エアバス系はA350XWBより以前の機体ではフロントの平面ガラスにより機首が尖った印象を受ける。ただしA350XWBからはフロントも含めてすべて曲面ガラスを採用しており、機首の印象がかなり変わった。

一方、ボーイング系も以前は6枚構成だったが、787からは4枚構成となり、フロントも曲面ガラスになった。三菱MRJは4枚、ボンバルディアCS100/300も4枚と、曲面ガラスを使用した機体は787と同様に枚数が少なくなっている。

MRJではサイドウインドウの後ろにアイシャドウのような塗装を施したり、A350XWBでは窓枠を黒く塗装していて機首の印象が他の機体とかなり異なるが、これはどのような意図で行なわれたのか一度、メーカーの担当者に聞いてみたい。

旅客機のテイルデザインの理由

円錐形かフィン形状か抵抗最小化のたたかい

左:フィン形状のB777、右:円錐形状のB787

旅客機の尾部形状はどのように設計されるかと言うと、まず離陸時の引き起こし角度が十分取れるような形状が確保される。その上で巡航時に機体全体の空気抵抗が最も少なくなるような形状が模索される。

具体的には機首から胴体に沿って機体尾部まで流れてきた空気流が、絞り込まれた弱体後部を通過する際に横に流れ込もうとするが、747やDC-10などでこの横への流れ(クロスフローと呼ぶ)が大きな空気抵抗になるということが分かったので、767では上下から絞り込んだ鉛筆のような尾部形状が採用された。ところが胴体直径が太くなった777では、引き起こし角度を確保するために下から削ぎ上げるような後部の形状となり、その代わり尾部がフィン状に成形されてクロスフローを最低限に抑え込む形に設計された。さらに777の次のモデルである787では、再び上下から絞り込んだ鉛筆の形状に戻っているが、これは引き起こし角度的には問題がないので、抵抗が最小限になる767と同じような形状としたものである。

このように尾部のデザインは離陸時のローテーションにおいて十分な引き起こし角度が確保できるかという要件と、胴体のクロスフロー抵抗を最小限にするという相反要件をどの辺りで妥協させるかという非常にデリケートな問題である。

胴体延長型におけるテイルヒットの回避策

もう一つ考えなければならないのが、胴体を延長したモデルにおける離陸引き起こし時の機体尾部と地面との間隔である。

現代の機体開発では、原型機を作った後に胴体を延長して派生機を開発していく手法が通例となっている。通常は主翼の前後で胴体を延長するが、それでも延長型では機体尾部と地面との間隔が少なくなり、いくら形状を工夫してもかなり苦しい設計になる。もちろん尾部に引き込み式のバンパーを取り付けて、万が一、テイルヒットしても機体構造が損傷しないようにしなければならないが、さらにアクティブに尾部と地面の間隔をコントロールしようとしたのが777-300ERのセミレバーギア(SLG)システムである。このシステムは離陸時のローテションにおいて機体の迎え角を増やすことにより、同じ離陸重量でも離陸滑走距離を短くしようという目的で開発された。SLGハイドロストラットがショックストラットの外側、トラックビームの前端に付いており、離陸滑走時にティルト位置にロックされるため、ローテーションの時のメインギヤ・ストラット有効長が長くなり、より大きな迎え角を取ることができる。

このあたりのメカニズムは、ちょうど人間がつま先立ちをすることにより、足を長く見せることができるのに似ている。このシステムが働かないと777-300ERはピッチ角8.9度でテイルヒットするが、SLGシステムが働けばこれが10.0度まで増加する。メカニズム的にもかなりトリッキーなシステムであるが、このようなメカニズムを採用してまで離陸時の機体の迎え角を大きくしたいのは、その分のメリットが必ず期待できるからである。

機体重量とスピードを受け止める強靭な脚部 ランディングギア

重量級の大型機は胴体下にもボディギア装備

現代のジェット旅客機では、ランディングギアはほとんどが引き込み式である。ただし短距離機ではブレーキを冷却する必要があることから、該えてカバーを付けずタイヤを外気に露出させる設計になっている機体もある。「ギアの本数は通常は前脚1本と主脚2本の合計3本であるが、中には中央脚と称して両三員の間にもう1本ギアを付け加えることもある。このような配置の機体としてはDC-10やMD-11がある。大型の747やA380などは前胴のほか胴体にボディギアが2本、主翼にウイングギアが2本あり、合計5本ギアがある。

また主脚にはタイヤが2本付いている機体、ボギービームの前後左右の合計で4本付いている機体(ダブルボギービームと呼ぶ)、さらに多くて6本付いている機体(トリプルボギービームと呼ぶ)がある。747ではボディギアもウイングギアもダブルボギービームであるが、A380のボディギアはトリプルボギービームとなっている。これはタイヤの荷重を下げるためで、空港によっては舗装強度の関係から乗り入れる機体の単車輪荷重を制限している場合がある。

クルマよりも先行した自動ブレーキの効能

メインギアにはブレーキが装備されているが、最近は重いスチールブレーキに代わって軽量なカーボンブレーキが一般化した。短距離機ではコストの関係でまだスチールブレーキが使用されているが、長距離機では軽量化による燃料節減効果が大きいのでカーボンブレーキが多用されるようになった。導入初期にはブレーキ鳴きが酷く、特に湿気が多い環境ではすりガラスを爪でひっかくような嫌な音と振動が出て整備陣を泣かせたが、最近はトラブルも出尽くして安定した品質になった。

最近は自動車でも自動ブレーキが登場し始めたが、航空機の自動ブレーキは一歩先に747-400の時代から普及している。通常はつま先でラダーペダルを踏むと作動する航空機のブレーキも、ラダー操作と重なった場合にはブレーキ操作が十分にできないという問題があった。自動ブレーキのメリットとしては、ブレーキ操作を自動ブレーキに任せることで、パイロットがラダー操作に専念できる点だ。

フラップの目的とメカニズム

翼断面の湾曲を強め揚力係数を3倍にも増大

旅客機の主翼には、例外なくフラップというデバイスが装備されている。これにはリーディングエッジ・フラップという主翼前縁に装備されるものと、トレーリングエッジ・フラップという主翼後縁に装備されるものがあるが、大部分の旅客機は両方とも装備されている。

どちらのフラップも下方に曲がる、あるいはせり出して翼断面の湾曲を強くすることにより揚力を増大することが目的である。揚力係数で言うと着陸フラップで最大3程度になるので、ごく簡単に言えば揚力が3倍になる。単純に下方に曲がるだけのフラップもあるが、より効率的な運航を目指して複雑な動きをするフラップもある。まず後方にフラップが伸びて翼面積を増大するという役目を果たす。さらに下方に折れ曲がって翼断面が湾曲するが、そのままでは主翼表面の空気の流れが乱れて失速しやすくなるので、主翼下面の空気を積極的に主翼上面の隙間から流して失速しないようにしている。

このようにフラップの間に隙間を作るものをスロッテッド・フラップと呼び、隙間が2つある場合はダブル・スロッテッド・フラップ、3つある場合はトリプル・スロッテッド・フラップと呼ぶ。ボーイング747(-8を除く)は離着陸時に可能な限り低速で飛行する必要性があるため、このトリプル・スロッテッド・フラップが装備されており、着陸時にはフラップがまるで簾(すだれ)のように展開される。

そのメカニズムはジャッキスクリュー式と呼ばれ、ネジを回転させて後方に押し出すことによりフラップを下げていく。フラップには大きな風圧が掛かるが、その力はネジに掛かるのでフラップが戻される(ブローバックと言う)リスクは小さい。欠点としては作動メカニズムが大掛かりになるためカバーが大型化することで、主翼下面には船のカヌーにも似たカバーが取り付けられる。ただし最近はフラップのメカニズムが簡略化される傾向にあり、747のような複雑な機構のフラップはこの先もう採用されないのではないか。また787やA350XWBのようにエルロンとフラップが統合され、フラップでありながらエルロンとしても機能するという複合型(フラッペン)になる傾向がある。

翼端デバイスの種類

3~6%と考えられる感費低減への効果

最近の機体は主翼端にウイングレットなどのいわゆる翼端デバイスを装着することが常識となった。

この翼端デバイスはNACA(現NASA)のウイントカム博士が発明したもので、抵抗の発生源となる翼端からの渦流の発生を抑えると共に、翼端デバイスから発生する揚力を前進方向に向けることにより推力に変えている。最初に採用されたのはMD-11(1990年初飛行)だったが、あまり普及はしなかった。「現在、ボーイング737NGが装備しているウイングレットは高さが2.1mもあり空港でも非常に目立つことから、その先進的なイメージが広く受け入れられて採用する航空会社が増えた。このデバイスによる燃料節減効果は飛行する距離によって異なるが、デバイスメーカーの主張によれば3~6%程度と考えられる。単に主翼のスパンを延長しても揚抗比の増大により同様の燃料節減効果が得られるが、主翼スパンの拡大は空港スポットのサイズや地上での取り回しに影響が出ることからウイングレットが選択されるようになった。ボーイング777や787では主翼の翼端を延長し、かつ後方に屈曲させた「レイクドウイングチップ」という形状が採用されている。

767ではウイングレットへの改修キットが販売されており、在来機にも取り付けることが可能となっている。価格的には数億円のオーダーとなる買い物であるが、今後、燃油の値上がりが続く場合には数年間で元が取れるという皮算用もあり、日本では日本航空と全日空の両社共に国際線使用機への装着改修を進めている。ウイングレットを取り付けると空力抵抗の減少により燃料消費量が低減するが、その半面ウイングレットの重量が増えること、主翼先端に重量物が付加されることによるフラッター対策や主翼スパーへの曲げモーメント増加により、主翼構造の強化も必要になる。

エンジンマウント方式のバリエーション

整備性は良好だが、対地クリアランスに注意

旅客機において最もスタンダードな方法が、主翼下にパイロンを介してエンジンを吊り下げる方式だ。エンジンが地面に近い位置に配置されるので、点検や整備が容易というメリットがある。一方、低翼機の場合には、主翼下にエンジン分の高さを確保しないといけないため、ランディングギアが長くなる(その分重量や格納スペースが増える)というデメリットがある。例えば737の場合、初期型(-100と-200)ではエンジンは細身の低バイパス比ターボファンであるJT8Dであったが、クラシック(-300~500)では直径の大きいCFM56となったため、ナセルをおにぎり型にして地上とのクリアランスを確保するという異例のデザインが採用されている。また、エンジンが地面に近くなるため、異物吸い込みを起こしやすい点もデメリットと言える。

旅客機では高翼機はアブロRJやDo228など少数派であるが、高翼配置の場合には主翼下に十分なスペースがあるため、エンジンを吊り下げてもランディングギアを短く、すなわち胴体位置を低くすることができる。ボーディングブリッジやタラップが整備されていない規模の小さい空港へ運航する上ではこの点がメリットとなり、機体に内蔵のステップなど簡易的な装置で乗降が可能となる。同様に貨物の搭載も容易となるため、貨物専用機や軍用輸送機などで採用が多い配置だ。旅客機の場合は、高翼機は不時着水時に水没するまでの時間を十分に取りにくい(低翼機であれば主翼がフロートとなって胴体は水没しにくい)というデメリットがある。

ファン直径拡大の有効な解決手段として

前述のパイロン吊り下げ式の派生型で、近年多く採用されているのが前方せり出し形態だ。これは、主翼下に吊り下げる点は前項と同じだが、パイロンを主翼から前方にせり出すような形状にし、エンジンを主翼下やや前方に配置する方法だ。エンジンの最も直径の大きい部分は最前面のファンであるが、このような配置にすることによってファン部分を主翼よりも前方に逃し、エンジン位置を高くすることができる。前方から見ると、ファンの上部と主翼が同じくらいの高さになっていることがわかる。

近年のエンジンは高バイパス比化が進んでおり、ファン直径が大きくなる傾向にある。そのため、相対的に機体が小さく主翼下の高さを十分に取れない中~小型機では、このようにエンジンを前方にせり出してできるだけ高い位置に配置する形態をとっているものが多い。737(-300以降)やMRJ、A320neoなどで顕著にみられる。

乗降性、操縦性で優位課題は“ディープストール

MD-90やCRJシリーズのように、機体後部にエンジンを搭載する形態もある。主翼下にスベースを必要としないため胴体位置を低くすることができ、設備の整っていない空港でも機体内蔵のステップで乗降可能であるなどのメリットがある。また、機体の中心線寄りにエンジンがあるため、エンジンの出力によって機体の姿勢が変化しにくく、操縦感覚に優れているという意見もある。

一方、地上から高い位置にエンジンがあるたり、点検や整備のしやすさでは劣る。特に3発機で垂直尾翼付け根付近にエンジンが配置されている場合には整備性は極めて悪い。またリアエンジンの場合、水平尾翼は垂直尾翼先に配置されることが多いが、高迎角姿となったときにエンジンから剥離した気流が水平尾翼にぶつかり、水平尾翼もストールしてしまう「ディープストール」という現象に陥る懸念がつきまとう。

造面でも不利な点があり、主翼から機体後部まで燃料配管が必要な点、重いエンジンが受体の重心から離れている(慣性モーメントが大きくなり運動性が落ちる)点、エンジン重量を支えるため機体後部の強度が必要で機体構造も重くなりがちな点、エンジンの振動がキャビンに伝わりやすい点などが挙げられる。

その他のエンジン配置

プロップ機では、プロペラから発生した速い気流を揚力に活かすため、主翼に直接エンジンを搭載してプロペラ後流が主翼に当たるように配置するのが一般的だ。

また、かなり特殊な例として、HondaJetのような主翼の上にエンジンを配置したものもある。このようなプライベートジェットクラスの小型機ではリアエンジン配置が多いが、HondaJetでは主翼上にエンジンを配置したことで機体後部にエンジン支持構造が不要となり、機内スペースを有効に活用できている(HondaJetの機体後部にはエアコンユニットが格納されている)。空力的には、一般的には空気の流れの速い主翼上面には空気抵抗になるようなものは配置すべきでないというのが定説であった。しかし、Hondaは風洞実験や数値解析により、遷音速域においては、主翼上面から発生した衝撃波をエンジンナセルの遅い流れと干渉させることで造波抵抗(衝撃波による空気抵抗)を減らせることを発見した。これは従来の航空機設計の常識を覆す斬新な設計である。この配置による空力的な効果は、飛行速度や主翼形状、エンジン配置等の絶妙な関係によって成り立つものでもあるので、他機種で一朝一タに真似できるものではないが、今後のビジネスジェットのエンジン配置に影響を与えるだろう。

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参考文献

  • 飛田翔「特集旅客機図鑑」『月刊エアライン』、2017年3月号、pp.38-45
  • 外江彩「特集旅客機図鑑」『月刊エアライン』、2017年3月号、pp.46-47

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