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世界一長い/短い滑走路とは? 空港の「滑走路に必要な長さ」はどう決まるのか

滑走路に必要な長さとは?

飛行機が離着陸するには滑走路が欠かせませんが、小型のセスナ機を運用する民間の空港から、大型旅客機が離着陸する国際空港の滑走路まで、その長さは様々です。

そもそも、航空機が離着陸に必要な滑走路の長さとは、どのくらいのものなのでしょうか。

伊丹空港を離陸するボーイング787(2017年、石津祐介撮影)。

まず言葉の定義ですが、航空機が地上で滑走を開始し、離陸して高度が35フィート(10.7m)に達する距離を「離陸距離」といい、滑走路の端を高度50フィート(15m)で通過し、航空機が停止するまでの距離が「着陸距離」となります。

一方、現代のジェット旅客機には離陸に際して速度の基準があり、離陸滑走中にエンジンなどのトラブルが発生した場合に、離陸を中止するか継続するかの操作を判断する「V1(離陸決定速)」、操縦桿を引き、機首の引き起こしを開始する「VR(ローテーション速度)」、航空機が地面から離れ、安全に離陸が続けられる「V2(安全離陸速度)」の3つがあります。

これらの要素から計算される、「『離陸距離』に15%の余裕を持たせた距離」「V1で離陸を中止にした際に必要な距離」「V1でエンジン1発が不作動となった場合に離陸を継続して高度35フィートに達するまでの距離」の、それぞれ3つのなかで1番長い距離と、「『着陸距離』に余裕を持たせた距離(乾いた路面で1.67倍、ぬれた路面で1.92倍)」を比べて、より距離の長い方が「安全運行において必要な滑走路の長さ」となります。

実際には搭載燃料や乗客の数、そして天候にも左右されますが、ボーイング737などの小型ジェット機は約1800m、ボーイング767などのワイドボディ機は約2000m、ボーイング747やA380などの大型機は3000m程度の距離が必要となっています。

世界や国内でもっとも長い/短い滑走路とは?

ボーイング747やエアバスA380など、大型の旅客機を運用するにはやはり3000m以上の滑走路が必要となってきます。日本で一番長い滑走路は、日本の玄関口、千葉県にある成田国際空港のA滑走路と大阪府にある関西国際空港のB滑走路が共に4000mと最長となっています。

4000mの長い滑走路を持つ関西国際空港(2016年、石津祐介撮影)。

他方、日本で一番短い滑走路は、550mの北海道の弟子屈飛行場でしたが、残念ながら2009(平成21)年に廃止となり、跡地はヒマワリ畑として再活用されています。そして2017年12月現在、鹿児島空港との定期便のある鹿児島県の薩摩硫黄島飛行場と、グライダーの離着陸がメインの大利根飛行場(茨城県河内町)が共に600mと最短となっています。

商用空港における世界最長の滑走路は、中国のチベット自治区にあるチャムド・バンダ空港で5500m。これは空港が標高4334mと高所にあり、エンジンの出力と揚力が低下するために距離が長くなっています。同空港からはチベット自治区のラサ、成都や重慶に定期路線があります。

世界一短い滑走路を持つファンチョ・E・ヨラウスクィン飛行場(画像:Fyodor Borisov〈Own work〉[CC BY-SA 3.0〈https://goo.gl/bdx88i〉]、via Wikimedia Commons)。

世界一滑走路の短い商用空港は、カリブ海に浮かぶオランダ領サバ島にあるファンチョ・E・ヨラウスクィン飛行場で396m。この島はオランダ領内最高峰のシーナリー山(887m)がある火山島で、島に平坦な土地がほとんどないため断崖絶壁に空港が建てられており、離着陸には高度な技量が必要といわれています。

離着陸距離を大幅短縮! 幻の「STOL機」とは?

飛行機が大型化することで滑走路も長くなる一方に思えるかもしれませんが、他方、飛行機の側で離着陸距離を短くする研究も進められてきました。

狭い国土での活躍が期待された国産STOL機「飛鳥」(後藤丈志撮影)。

たとえば航空機による大量輸送時代を迎えた1970年代、日本国内の地方には、ジェット機が運用できるような滑走路を持つ空港はまだ少ないものでした。そこで、狭い国土で活躍が見込まれた短い距離で離着陸するSTOL機(Short TakeOff and Landing)の開発プロジェクトが、NAL(航空宇宙技術研究所、現JAXA)を中心に進められました。

「飛鳥」のベースとなった航空自衛隊の輸送機C-1(2016年、石津祐介撮影)。

航空自衛隊のC-1輸送機をベースに開発された「飛鳥」は、1985(昭和60)年10月に初飛行を行います。離陸距離は680m、着陸距離は480mと、STOL機として十分な性能を発揮し、当時の最新技術が用いられ量産化が期待されましたが、機体に掛かる高いコストや、このころになると地方空港にも長い滑走路が整備され始めたために見送られました。

かかみがはら航空宇宙博物館に展示されている飛鳥(松尾謙一撮影)。

2017年12月現在、「飛鳥」の機体は岐阜県各務原市にある「かかみがはら航空宇宙博物館」に所蔵されており、見学することができます(現在、同博物館は改装中で2018年3月24日にリニューアル予定)。

Source: 乗りものニュース編集部

参考文献

  • 「世界一長い/短い滑走路とは? 空港の「滑走路に必要な長さ」はどう決まるのか _ 乗りものニュース」, https://trafficnews.jp/post/79313 2020年7月9日アクセス
  • 「世界一長い/短い滑走路とは? 空港の「滑走路に必要な長さ」はどう決まるのか _ 乗りものニュース- (2)」, https://trafficnews.jp/post/79313/2 2020年7月9日アクセス
  • 「世界一長い/短い滑走路とは? 空港の「滑走路に必要な長さ」はどう決まるのか _ 乗りものニュース- (3)」, https://trafficnews.jp/post/79313/3 2020年7月9日アクセス